信州佐久 貞祥寺にて
(中央沢木老師、右貞祥寺岡本大鵬方丈、左祖道師)
君読みし奥の細道道の記の 戸伊麻といふ処そこゆわが古里は
信濃路の筧の水に衣すゝぐ 人に教はる千曲川旅情の歌
信濃路のかけひの水に衣すゝぐ 人の歌ひし千曲川旅情のうた
昭和23年夏しなのじにてふるさとを問われふるさとを語りし折作詞 昭和二十六年五月十二日作曲
又
柴笛を藤村先生に手向けんと 古城のほとり柴笛をふきしかな
昭和二十四年夏のこと しなの路のうた
『草笛禅師歌曲集』〜安泰寺歌曲集〜 より
小諸にて少し遊びました。その折上野の美術大学の生徒四、五人居合わせて私の姿をスケッチさせてくれと申しましたから、それでは坐禅(坐相)も一度は見ておくようにと旅情の歌の碑のほとりでしばし坐禅くみました。
これが今年のしなのじの旅の最初の風流とやいわむもの。古城のほとりに遊ぶ旅人のうち、今日坐禅をみし人々語るらく「坐相は実にもみ仏なり」と。古城のほとりで私に会う旅人たちは、何か「尊とき因縁」ということを感じ、その因縁によりて私と遊ぶのであるらしく、そんな口ぶりいたします。
小海線中込駅にて 七月二十九日 夕
『我立つ杣』〜奥の旅つと〜 より